チランジア(ティランジア)|初心者が知っておきたいエアープランツの基本情報

チランジア(ティランジア)

「エアープランツ(Air Plant)」の愛称で知られるチランジア(ティランジア)は、1980年代後半に「土がいらない、空気中の水分で育つ」というキャッチコピーで紹介されブームになった観葉植物です。インテリア性の高さとユニークな姿から注目されましたが、当時は“水やり不要”と誤解されることも多く、枯らしてしまう人が続出しました。

今では情報の普及により、「水分と風通しが極めて重要」であることが知られるようになり、『乾乾燥に強く丈夫でインテリア性の高い初心者向け観葉植物』でありながら、水と風を欠かすと長く育てられないことが広く理解されています。

ここでは、そんなインテリアプランツとして根強い人気を誇るチランジアを育てるために知っておきたい基本的な情報や育て方について紹介します。

チランジア(=エアープランツ)ってどんな植物?

「エアープランツ」という言葉は知っているけど、「チランジアって何?」という人もいるかもしれません。実は、チランジア(=エアープランツ)はパイナップルの仲間で、原種だけで600種以上も存在する個性豊かな植物たちです。ここでは、ちょっと不思議なライフスタイルが魅力的な「チランジア」がどんな植物なのかについて、名前の読み方や原産地などの基本的な情報を見ていきます。

「チランジア」と「ティランジア」どっちが正解?

「チランジア」と「ティランジア」はどちらも同じ植物を指しています。これは、学名である「Tillandsia」の発音をどう表すかという表記の違いによるもので、現在の日本では古典ラテン語の発音に近いとされる「チランジア」が一般的です。ただし、国際的には [tɪˈlændziə] と発音されるのが一般的なため、より実際の発音に近いのは「ティランジア」という表記ということになります。

とはいえ、日本国内では1980年代のブーム以降、「チランジア」の表記が定着し、今でも園芸書籍や専門店、テレビ番組などで幅広く使われています。このため、少なくとも当面の間は「チランジア」が主流であり続けると思います。ですが、愛好家や日本ブロメリア協会の会報など「ティランジア」への移行も進んできているため、将来的には変化があるかもしれないですね。

エアープランツ(Air Plant)という通称の由来

「エアープランツ(Air Plant)」という呼び名は、チランジア(Tillandsia)が「土に根を下ろさず、空中で暮らす姿」から名付けられました。そのキャッチーな名前から、1960年代の欧米で広まり、特に観葉植物市場で定着していきました。

日本では1980年代後半のブーム期に輸入が盛んになり、「土も水もいらない植物」として注目を集める中で「エアープランツ」という名称が広く知られるようになりました。

実際には水分補給や風通しが極めて重要!

当初に、「土も水もいらない植物」というキャッチコピーで広まったため、まるで「空気中の水分だけで生きられる」かのように思われていました。しかし実際に空気中の水分だけで生きていくには、「梅雨時期のような高湿度」と「空気の流れ」が不可欠です。日本の環境(特に乾燥しやすい冬場や室内)では、『定期的な水やりが必須』となります。

チランジア(ティランジア)の基本情報

植物学的な分類

チランジアはパイナップル科(ブロメリア科)の一員で、チランジア属に分類されます。具体的には下表のように整理できます。

亜科
ツユクサ目パイナップル科チランジア亜科チランジア属
CommelinalesBromeliaceaeTillandsioideaeTillandsia

※ 「エアープランツ」という名称は分類名ではなく、あくまでも流通上の俗称です。

原産地と生育環境

チランジアの原産地はその種によって様々ですが、

  • アメリカ南部
  • 中南米(メキシコ~アルゼンチン)

に広く分布しています。中でもメキシコやグアテマラは自生種・生産量ともに豊富なことで知られています。特にメキシコは標高や気候の多様さに支えられ、世界最多の原種が確認されている国です。

また標高や生育環境も種によって大きく異なり、

  • 標高:0~3000m
  • 環境:熱帯低地の樹林から高地の岩場まで

と非常に多様な環境で自生しています。

大きさと姿

チランジアの大きさは、種によって様々で、おおよそ次の表のように分けることができます。園芸店やネット販売で目にするのは5~30㎝程度のものが多い印象です。

小型種中型種大型種
3~10㎝10~25㎝25cm~1m以上

葉の形状は、細長い剣状や筒状を基本としつつ、葉幅・トリコームの密度や長さ・カール(うねり)の有無などが種によって変わってきます。

葉色はトリコームの量によって緑~銀白色に見えるのが基本で、開花前や強い光の下では赤・ピンク・黄色などに変化する種も多くなっています。

おすすめのチランジアについて知りたいという人は、こちらを参考にしてみてください。

花言葉と風水的効果

チランジアの花言葉は、「不屈」「偶然の出会い」「自由」です。

それぞれ、

  • 土に根を張らずとも空気中の湿気を頼りに育つ「たくましさ」
  • 風に運ばれてたどり着いた場所で生き抜く「偶然性」
  • どんな空間にも自然に馴染み「自分らしく生きる」姿

を象徴していると言えます。

そのため、インテリアとしてだけでなく、「新たな環境で自分らしく進んでいく」人への後押しとして、贈り物としても人気があります。

また、風水的にも「空間を浄化し整える」「対人運・恋愛運UP」などの良い効果をもたらすとされています。風水に興味がない人も、チランジアが縁起の良い植物であるということは知っておくと良いかもしれません。

チランジア(ティランジア)の特徴

エアープランツ(Air Plant)とも呼ばれるチランジアは樹木や岩などに着生して生活する「着生植物」の1種です。ここでは、そんなチランジアの特徴についてみていきます。

チランジア最大の特徴・トリコーム

チランジアは、着生植物と言われる仲間の中でも「葉の表面から空気中の水分や霧、水滴を取り込む」という特殊な性質をもった植物です。これを可能にしているのが、葉の表面に備わった「トリコーム」と呼ばれる特殊な構造です。

トリコームは、中央に位置する「シールド」と外周の「ウイング」によって構成された鱗片状の器官です。ウイングが水分を含むことで葉に密着し、シールド部分を経由して葉の内部に水を取り込みます。

このトリコームこそが、チランジアの最大の特徴です。ウイングの長さやトリコームの密度は種によってさまざまで、トリコームの密度が高く、ウイングが長いほど葉が銀白色になり、乾燥に強くなっていきます。

<実は重要な根の役割!>

チランジアの根は、「着生時に体を固定するだけの役割」だと言われてきました。しかし、実際には「根からも水分や養分を吸収し、株の生育を促進する」ことがわかっています。実際に、「根を常に水に浸しておくと株が大きく成長する」という報告を、YouTubeなどで簡単に見つけることができます。

乾燥にも耐えうるが高湿度を好む

チランジアは雲霧林や熱帯林、砂漠地帯、高地の岩場など様々な環境で自生しています。そのためチランジアは、乾燥にも耐えうる性質を持っています。ですが、実際にはこれらの地域では一日中高湿度(60~90%)であったり、昼夜の寒暖差による夜霧や朝露からの吸水が可能な環境であったりです。

「空気中の水分を吸って生きる」と言われてきたチランジアですが、実際には「トリコームがしっかりと湿る」ような高湿度環境が大好きなのです。

蒸れには弱いので要注意

高湿度を好む種が多いチランジアですが、「葉がいつまでも濡れている」「空気が動いていない」環境では株元から一気に腐敗が進行してしまいます。特に、壺型と言われる種では葉の隙間に水が溜まりやすいので要注意です。水やり後などにいつまでも乾かずに濡れている環境を作ってしまうことがないようにしましょう。

寒さには弱い

チランジアは熱帯~亜熱帯地域を中心に進化してきた植物です。そのため、基本的に寒さには強くありません。多くの種で、10℃以下になると寒さに耐えるために休眠状態に入り成長を止めてしまいます。この状態で株が濡れていると一気に低温障害による枯につながるので要注意です。冬場は10℃以上をキープできる暖かい場所で管理するようにしましょう。

実は暑さにもそこまで強くない

熱帯~亜熱帯地域を中心に進化してきたチランジアですが、実は暑さにもそこまで強くないので注意が必要です。イオナンタ(T. ionantha)など40℃近い環境でも耐えることができる種がある一方で、ブルボーサ(T. bulbosa)のように35℃を超えると一気に弱ってしまうものもあります。

チランジアは「自生地の範囲が広い」がゆえに、種によって「耐暑性が大きく異なる」ことは覚えておいてください。

チランジア(ティランジア)の基本的な管理方法

チランジアは、用土を必要としないことから、置いたり吊るしたりとインテリアとして気軽に楽しめる植物です。そのため、管理のポイントを知らないまま「インテリアとして購入して枯らしてしまう」ケースが他の観葉植物よりも多いと感じています。ここでは、そんなチランジアを元気に長く育てるための室内管理のポイントを紹介していきます。

日本は北海道から沖縄まで、南北に長い国土になっています。皆さんのお住まいの地域によっては、これから紹介する内容がそのまま当てはまるとは限りません。あくまでも目安として参考にしていただき、「自分の育てる環境」に合わせて調整していってください。

置き場所について

チランジアの葉は強い日差しに晒されると葉焼けを起こし、反対に暗すぎる環境では光合成不足で弱りやすくなってしまいます。南向きや東向きの窓辺といった明るく強すぎない日光が当たる場所においてあげましょう。種類によって光の好みが異なるため、日光の当たり具合や葉色の変化を観察して調整することも大切です。

西日には要注意

西日は、赤色や赤外線といった光を多く含みます。日中の暑さが残る時間帯に、このような強い光に当てると「葉焼け」などのトラブルの原因となります。西向きの窓しかない場合には、ミラー加工されたレースカーテンで光を和らげるようにしましょう。

低温と蒸れに注意

チランジアは多湿な環境を好みますが、蒸れには弱く、通気性の悪い環境では株元に水がたまりやすく腐敗の原因になります。扇風機やサーキュレーターで空気を動かし、葉と葉の間に湿った空気が滞留しないように管理してください。特に水やり後は、葉の間に溜まった水は軽く振って飛ばし、可能であれば逆さに吊るして、葉の根元に水滴が残らないようにしましょう。

また、チランジアは寒さにも強くありません。最低気温が10℃を下回る頃には夜間は窓際から離して室温の下がりにくい場所に置きましょう。気温が8℃以下になると急激に弱るので十分注意が必要です。

冬場は水やりを暖かい時間帯に行い、夜には水分が残らないようにすることが大切です。

暖房直撃にも要注意!

エアコンやストーブの風は高温なうえに乾燥しています。こういった風が直接当たると葉先が枯れる原因になるので、風向きを調整し直接風が当たらないようにしつつ、加湿器で湿度を保つようにしましょう。空間全体の湿度を上げると葉がしなやかに保たれやすくなるので理想的です。

水やりはたっぷりと

チランジアの水やりは、生育の良し悪しを左右する最大のポイントの一つです。水やりの方法は、

  • ミスティング:霧吹きで水をかける
  • ディッピング:バケツなどに水をため数十秒〜数分間水に浸ける
  • ソーキング:バケツなどに水をため数十分~数時間水に浸ける

などがありますが、基本となるのはミスティングです。

チランジアの水やりでは、葉のトリコームに十分な水分を吸収させるためには株全体を濡らすことが重要なので、春〜秋は朝夕の涼しい時間帯に週に2〜3回ミスティングでしっかり水をかけるようにしましょう。1回あたりの霧吹きで株全体が滴るほど濡らすのが理想です。

気温が10℃以下に下がる時期は週1回程度に回数を減らし、暖かい時間帯に行い夜までに乾燥させておくことで、凍結や蒸れを回避してください。

乾燥が激しい時期や大株の水分不足を感じたときには補助的にディッピングを行ってください。葉がストロー状に丸まってきたり、カールが強くなったりするのが乾燥のサインです。

基本的にソーキングは不要

ソーキングは、基本的に必要ありません。水切れでぐったりした株を救済する時や病害虫を洗い流す目的で行われることがありますが、「長時間水に浸けっぱなしにすることで株元から一気に腐る」リスクが非常に高くなります。どうしてもという場合でも2〜3時間以内にとどめ、健康な株に行うことは避けてください。

季節ごとの水やりの目安
  • 4~5月

    日長が長くなるのに合わせて、最低気温も10℃を下回らなくなり、暖房なしの環境でも植物が休眠から目覚めてきます。朝または日中の温かい時間に週2~3回ミスティングを行い、乾燥が強いときは月1回程度ディッピングを加えてください。まだ夜間は気温が低くなるため、夕方の水やりは避けてください。

    この時期の我が家では、毎朝10時前後にミスティングです。水やり後30分程度で乾燥するような環境にしています。

    水やり後にしっかり乾燥する環境であれば、毎日ミスティングしても問題ありません。

  • 6~8月

    最低気温が安定して15℃を超え、湿度も上がってくるチランジアの生育期です。この時期は活発に水を消費するので、やや多めに水やりをします。週3回以上のミスティングを基本とし、高温で乾燥する日は朝と夕方の2回行うようにしてください。ただし、「部屋の湿度が常に70%以上になる」場合は、4~5月と同じで問題ないと思ってください。

    また、水やりの時間帯にも注意が必要です。この時期は日中の気温や日差しが強くなるため、エアコンを使用していたとしても窓辺の室温は40℃を超えることもあります。このような時間に水を与えてしまうと、株が茹で上がってしまうので絶対に避けてください。水やりの時間帯は「朝の9:00までか、夕方16:00以降」にしましょう。

    この時期の我が家では毎日2回の水やりです。朝は8時ごろまでにミスティングをし、帰宅後(22:30過ぎ)に葉を冷やすように霧吹きをしています。朝晩どちらも30分程度で乾燥しています。

  • 9~10月

    日長が短くなり、最低気温が10℃を下回る日がでてきます。暖房なしの環境だと植物の活動が緩やかになり、休眠するようになります。ミスティングの頻度を週2回程度に減らし、午前中の温かい時間帯に済ませるようにしましょう。

    暖房により「最低室温が15℃を下回らない」場合、成長自体は続けています。ただし、日長の短さにより使う水の量が少なくなるので「今までと同じ水の量」だと蒸れや徒長につながります。水やりの頻度は控えめを意識するようにしてください。

    この時期の我が家ではストーブを炊き始めるので、室温は15℃以上にキープされています。そのため、この時期の水やりは毎朝10時前後にミスティングで行っています。

  • 11~3月

    日照時間が非常に短く、最低気温も5℃以下になる時期です。暖房を入れない場合、最低室温も5℃を下回る可能性があります。

    チランジアは10℃を下回ると休眠し始め、8℃を下回ると低温障害になるリスクが急激に高まります。もし最低室温が8℃を下回る場合には、発泡スチロールで簡易的に囲うなどにより、8℃以下にならないように保護してあげてください。

    暖房などにより最低室温が10℃を下回らない場合は、9~10月と同じ対応で構いません。

    この時期の我が家はストーブが1日中ついています。15℃以上の室温がキープされるため、この時期でも水やりは毎朝行っています。

冷暖房の使用状況や部屋の湿度によって、株の乾き方は大きく変わります。ぜひ自分の環境に合わせた水やり方法を見つけてください。

チランジア(ティランジア)に肥料は必要?

野生のチランジアは雨に含まれるわずかな養分や落ち葉の表面から栄養分を吸収して生きています。そのため、室内環境でも「肥料は与えなくても成長」します。ですが、大きくしたい・花を咲かせたいというときには株自体にしっかりと栄養が蓄えられていることが必要です。そのため「肥料は必須ではないが、適切に与えれば生育を促す補助になる」と考えてください。

濃すぎる肥料は逆効果

濃度の高い肥料は葉の表面や株元に藻やカビを発生させ、病気や腐敗につながる恐れがあります。肥料を与える場合には「薄めから開始して様子を見る」ようにしてください。

肥料の種類

肥料にはその成分の種類によって、有機肥料と化成肥料と呼ばれる2パターンがあります。室内で管理することになるチランジアに与える肥料としては、化成肥料のほうがおすすめです。有機肥料には、どうしても臭いが出やすいことや、コバエなどの虫が住み着きやすいというデメリットがあるからです。

また、肥料は固形タイプと液体タイプにも分けられます。ミスティングを通して肥料を与えることが中心になるチランジアでは基本的に使うのは液体肥料がメインになります。とはいえ、緩効性の固形肥料(堆肥など)を葉の隙間に挟むことで、液肥だけよりも大きく成長させることが可能です。大きく成長させたいという人は併用してみるのもありだと思います。

肥料
タイプ
形状使用用途使用対象
(推奨)
効き方メリットデメリット代表例
有機固形元肥屋外栽培ゆっくり・土の中の微生物を活性化し、土を豊かにする・臭いが発生する
・虫の発生源になる
・効き始めが遅い
・堆肥
・油かす
有機固形元肥
追肥
屋外栽培ゆっくり・効き方が穏やか
・根への負担が小さい
・臭いが発生する
・虫の発生源になる
・効き始めが遅い
・有機ペレット肥料
有機液状追肥屋外栽培ゆっくり・効き方が穏やか
・根への負担が小さい
・臭いが発生する
・虫の発生源になる
・効き始めが遅い
・発酵魚エキス液
化成固形元肥室内外ゆっくり・無臭で虫がわきにくい・連続使用による土への塩類蓄積マグァンプK
化成固形追肥室内外
(鉢植え)
ゆっくり・無臭で虫がわきにくい
・鉢のふちに置くだけで手軽
・連続使用による土への塩類蓄積
・水やりの量や温度により溶解速度が変わる
・溶解時に局所的な濃度が高くなり肥料焼けしやすい
・プロミックシリーズ
・グリーンそだちEX
化成液体追肥室内外
(鉢植え)
速い・無臭で虫がわきにくい
・吸収が速く効果が見えやすい
・濃度調整しやすく肥料焼けを防ぎやすい
・連続使用による土への塩類蓄積
・都度、希釈又は溶解が必要があり手間
・微粉ハイポネックス
・ハイポネックス原液
・住友液肥

肥料を与える時期と与え方

<液体肥料のみを使用する場合>

4月〜9月の生育期に「パッケージ記載の規定倍率の2〜3倍に希釈」して与えるのがおススメです。4~6月は週に1回、7~9月は2週間に1回の頻度で水やりを液肥に置き換えてください。与える際は、水やりと同じように「霧吹きやディッピングを用いて、株全体にたっぷり濡れるまで」与えるようにしましょう。この時株元(葉の付け根)まできちんといきわたらせることが重要です。与えた後に、風通しの良いところでしっかり乾かすことも忘れないようにしましょう。

濃すぎる肥料は藻や腐敗を招きます。必ず薄めから始めてください。

<固形肥料を使用する場合>

5月〜9月の生育が旺盛な時期に、ごく少量(粒状のコーティング肥料なら数粒、粉状や堆肥なら軽く一つまみ)を葉の付け根や株元に挟むようにして与えてください。化成肥料の場合、直接触れている葉は肥料により葉焼けする可能性が高いので、できるだけ外葉に挟むようにしましょう。与えるのは月に1回程度で十分です。

<固形肥料と液肥を併用する場合>

固形肥料を与えるのは「5月の1回のみ」にしておくのがおすすめです。液体肥料は、「規定の3〜5倍に希釈」するようにします。液肥を与える頻度は液体肥料のみの場合と同じで構いませんが、固形肥料からも栄養が供給されるため、株の状態を見ながら回数を調整してください。

併用時の注意点

固形肥料と液体肥料を併用すると肥料濃度が高くなりやすくなります。葉焼けや藻の発生がないかこまめにチェックしましょう。これらが見られたら肥料が濃すぎる合図です。すぐに固形肥料を取り除き、液肥も中断してください。

冬期(10〜3月)の扱い

この時期はチランジアの成長はほぼ止まっています。そのため、乾燥を避けるための加湿や、適度な水やりが最優先で、基本的に肥料必要ありません。暖房などで最低室温が15℃以上あり、株に動きがみられる場合は、「薄めの液体肥料(規定の5倍程度に希釈)を月に1回程度」を目安に、軽く霧吹きしてあげると元気に育ちます。

注意すべき害虫や病気

チランジアは丈夫で、害虫や病気にもかなり強い部類の植物です。ですが、これらの被害をゼロにすることはできません。放置すると花が咲かずに終わったり、子株が減ってしまったりすることもあり得ます。もしもの時に備えて、症状や対処法も知っておいてください。

チランジアによく出る害虫

ハダニ

ハダニは、暖かく比較的乾燥している時期に発生しやすい害虫です。葉の表面に寄生し養分を吸い取ります。その結果、葉にかすれて色が抜けたような斑点が出てきたり、葉裏がざらざらしたような質感になったりします。葉の表面にクモの巣のような糸状のものがついていたら要注意なのでしっかり観察し、発見したらディッピングやソーキングにより洗い流すようにしましょう。この時、薬剤を混ぜた溶液を使うとより効果的です。

葉のほこりなどを落とすためにも、普段から株全体にしっかりと水をかけて予防しておくのが重要です。

カイガラムシ

カイガラムシは、年間どの時期でも発生する可能性がある害虫です。特に、暖かく比較的乾燥している時期に発生率が高くなるので気を付ける必要があります。葉の付け根や茎に寄生し、養分を吸い取ってしまうことで、黄変や枯れにつながります。また、放置していると病気(すす病など)を誘発することもあります。

幼虫のうちは薬剤の使用で駆除可能ですが、成虫になると白や茶色のかたい殻をかぶってしまい薬剤が効きにくくなります。見つけたら、葉や根を傷つけないように注意しながら、指や歯ブラシなどでこすり落とすかピンセットでつまんで取り除きましょう。

チランジアで注意すべき病気・生理障害

蒸れによる腐敗

チランジアは鉢土を使わないため「水のやり過ぎはない」と誤解されがちですが、葉の隙間に水が溜まったまま乾かないと株元が腐って黒く変色して中心部分から一気に枯れてしまうことがあります。特に壺型や筒型の種は水が溜まりやすいので注意しましょう。

サーキュレーターなどで水やり後の乾燥を促し、いつまでも湿ったままにしないことが最大の予防策です。

低温障害

チランジアは、寒さには強くありません。特に、低温+加湿の組み合わせは最悪です。冬季でも室温を10℃以上にキープできるような管理を心がけましょう。どうしても10℃以下になる場合は、発泡スチロールで囲うといった防寒対策を施してください。

低温障害を疑う症例としては、葉先が半透明になる・株元が柔らかくなるといったものがあります。これらの症状が冬場に見られたときは、すぐに水やりをストップして暖かい場所に移動させてあげましょう。

葉焼け

夏の西日や強すぎる育成ライトに当たり続けることで、葉が黄色~茶色に変色し枯れ込んでくるのが葉焼けです。黄色のうちに避難させればそれ以上の進行は防げますが、一度焼けてしまった葉は元には戻らないので注意しましょう。

西日しか取り込めない場合には、夏場だけでもレースカーテンなどで遮光するようにしてください。

褐斑細菌病

葉に「赤や黒の斑点」ができてくるのが褐斑細菌病です。原因となる菌はもともと共存していることもあり、株が弱ったときに発症します。多湿な空気が滞留している環境が発生原因なので、風通しを良くしておくことで発症を防ぎましょう。

発症してしまった場合には、清潔なはさみなどで早めに切除することで対処してください。殺菌剤の使用も効果的です。

すす病

カイガラムシなどの害虫が葉につくと、直接的な被害だけでなく排泄物による病気の誘発も起こります。その代表例がすす病です。すす病になると、葉が黒く煤けたようになり光合成ができなくなります。結果として、株の体力が落ちてしまいさらなる病気や害虫の被害を受けやすくなります。特に、細菌系の病気は厄介です。菌そのものは植物と共存しているため、株の体力が落ちると一気に発症につながりかねません。風通しを意識しつつ、害虫を発見したら即駆除することで、すす病の発生を予防しましょう。

チランジアを育てていて起こりやすいトラブル

チランジアは、「丈夫で育てやすい、オシャレな観葉植物」の代表格です。とはいえ、育てていく中でトラブルに遭遇することもあります。ここでは、ありがちなトラブルについてみていきたいと思います。

葉が巻いたりしおれたりしてきた

葉が中央に向かってU字に巻き込んだり、先端から枯れ込んだりしてくる場合は乾燥(水不足や低湿度)のサインです。暖房や冷房で空気が乾燥している室内では、株が水分を奪われてこのような症状が現れやすくなります。普段のミスティングの回数を増やしたり、ディッピングを取り入れたりして水分を補給しましょう。(ソーキングは逆効果になる可能性が高いので控えるようにしましょう。)

併せて、加湿器などで空間の湿度を高めることも重要です。50%以上の湿度を目安に加湿してあげましょう。加湿器での湿度向上が難しい場合には、水を張った受け皿の上で管理するなどの工夫をしてみてください。

株元が黒くなっていたり、柔らかくなったりしている場合には腐敗の合図です。腐って枯れている部分を取り除き風通しの良い日陰で乾燥させるようにしてください。その株自体の回復は困難ですが、子株を吹き復活する可能性があります。

葉の色が赤や黄色、茶色に変色してしまった

開花期以外に葉色が赤くなる原因は、強い光によるアントシアニンの沈着です。一方、黄色や茶色になる原因は、葉焼けや肥料過多などが考えられます。

開花期以外に葉の色が赤や黄色になってきたら、まずは強すぎる光を疑い置き場所を見直してください。夏の西日が窓越しに直接あたっている場合などは遮光が有効です。育成ライトで管理している場合には、距離や照射時間を調整してください。ただし、暗すぎる環境は徒長の原因になるので注意しましょう。

肥料を与えた後にこのような症状が出てきた場合には、「肥料焼け」を疑いましょう。葉先が黒ずんだりしてきている場合には肥料焼けの可能性が高いです。このような場合には、株全体にしっかりと水をかけて肥料成分を洗い流し回復するのを待ちましょう。

葉が黄色く透けたり黒ずんだりしてきた

外葉や株の中心付近から、黄色く透けたようになり枯れ込んできたり、黒ずんできたりする原因は、低温障害や蒸れによる腐敗です。水やり後にいつまでも湿っていると株元から腐敗が進行し、このような症状を引き起こします。

腐敗してしまった葉は、放っておくと周囲へと腐敗が進行する原因になるので、ナイフやハサミで切除しましょう。その後は、「風通しの良い乾きやすい環境」でしっかり乾燥させてください。冬場にこのような症状が見られた場合には、室温が低くなりすぎていないか(10℃以下になっていないか)にも注意が必要です。適切にストーブなどを使用し、室温を10℃以上(できれば15℃以上)で維持するようにしましょう。

枯れてしまった

チランジアが枯れてしまう原因はいくつか考えられますが、可能性が高いのは水やり加減の失敗です。

毎回の水やり後に、いつまでも乾かずに株元が濡れたままになっていると腐敗によって枯れてしまします。逆に、蒸れによる腐敗を怖がりすぎて、極端に乾燥させてしまうことも枯れにつながります。

枯れてしま多株は元には戻りません。枯らしてしまうことがないように、

  • 葉の状態をよく確認し、少し水を欲しがっているタイミングでしっかりと水をあげる
  • 水やり後は、株元までしっかり乾かす(遅くとも2時間以内には乾くようにする)

ようにしましょう。

また、冬場に低温障害が出たり、肥料のあげすぎが原因で肥料焼けを起こしたりして枯れることもあります。

10℃以上の室温をキープしつつ、乾湿のメリハリをきちんとつけることがチランジアを枯らさないポイントです。

チランジア(ティランジア)の増やし方

チランジアの増やし方には、①実生(種を取って育てる) ②株分け の2つの方法があります。ですが、チランジアを実生で増やすのはあまり一般家庭では現実的とは言えません。

ここでは、「比較的容易にチランジアを増やすことができ、成功率の高い」方法である、株分けについて紹介します。株分けは基本的にはいつでも行えますが、株分け後は未発根の小さな苗になるため、冬場や真夏は避けるのが無難です。

チランジア(ティランジア)を株分けで増やす方法

株分けは、株元で親株とつながっている子株を切り分ける作業です。多くのチランジアは、株が十分に成熟すると開花します。そして、開花後に株元や葉腋から子株を出します。この子株が親株の1/2程度の大きさまで成長したら株分けのタイミングです。

株分けはするべき?

子株は株分けしなくてもしっかりと成長します。この親株とつながったまま群生している状態がクランプと言われる状態です。クランプはボリュームがありインテリア性も高いので、無理に株分けする必要はありません。ただし、クランプ状態だと「株元が非常に蒸れやすくなる」というデメリットがあることは知っておいてください。風通しなどの不断の管理に自信がなければ、株分けして別々の株として管理するほうが安全です。

株分けの手順
  • Step 0
    子株の成長具合を確認

    あらかじめ確認しておく必要があるのが、子株の成長具合です。あまりにも小さすぎる段階で親株から切り離してしまうと、その後の成長が極端に遅くなり、管理の難易度も上がってしまいます。親株の1/2程度(少なくとも1/3以上)の大きさに成長し、株元がしっかりしていることを確認してください。

  • Step 1
    親株から切り離す

    種にもよりますが、チランジアの子株は「株元に親指をぐっと挿し込み外側にポキッと折る」ことで、手で分けることが可能です。

    ただし、より安全に切り離すのであれば、

    1. 清潔なナイフ(消毒済みのクラフトナイフがおすすめ)を用意する
    2. 子株付近の親株の葉を数枚とり、つながっている部分を露出させる
    3. 子株側に基部が残るようにカットする

    という手順で作業をするのがおススメです。

  • Step 2
    傷口をふさぐ

    親株と子株の切り分けができたら、傷口から菌が入るのを防ぐために傷口をふさぎましょう。もっとも単純な方法は半日から1日風通しの良い日陰で乾燥させることです。これにより傷口にかさぶたが作られます。

    我が家では、株分け後の切り口を「アロンアルファ」でふさいでいます。切り口に薄くアロンアルファを塗り、霧吹きで水をかけると白く固まりかさぶたを作ることができます。

    様々な方のブログやYouTubeでもこのアロンアルファを使う方法は紹介されています。実際に私もやっていて今まで植物に異常が起きたことはありません。

    ただし、「本来の使い方」ではないので、何かあってもあくまでも自己責任ですのでご注意を。

  • Step 3
    仕上げ

    自分の飾り方に合わせて、流木やコルクに固定したり、水苔や軽石を使って鉢植え風にしたりといった作業を行ってください。その後は、乾燥させすぎないように水やり管理を行うようにしましょう。

強制的に子株を吹かす!

チランジアは、アガベや多肉植物と同じように、「胴切り」という方法で強制的に子株を出させることができます。作業自体はそれほど難しいものではないので、「株が大きく育ってはいるが花が咲かない」という人は挑戦してみてください。

通常の株分けよりも株へのダメージは大きく、失敗すると株がバラバラになってしまうというリスクがあることは知っておいてくださいね。

飾り方自在!チランジア(=エアープランツ)で日常を彩ろう

チランジアは

  • 土を必要としない
  • 飾り方の選択肢が豊富
  • 花が美しい

といった、インテリアプランツとしてとても優れた性質を持つ植物です。

健康に育てるには、ちょっとしたポイントを押さえる必要はありますが、基本は丈夫で初心者にも育てやすい植物です。種のバリエーションも豊かでお気に入りを見つける楽しさもあります。

ぜひお気に入りの一株を手元において、ゆっくりと元気に育っていく姿を楽しんでください。

サンセベリア以外の我が家で育てている植物についても、基本的な管理方法を紹介しています。良ければ以下の記事も確認してみてください。

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