フィカス|基本情報と初心者でも失敗しない基本的な育て方を解説

フィカス

光沢のある葉や個性的な樹形が魅力のフィカス(Ficus)は、ゴムの木やベンジャミン、ウンベラータなど、インテリアグリーンとして広く親しまれている植物です。ひとくちに「フィカス」といってもその種類は非常に多く、葉の大きさ・形・色合い、幹の太さや伸び方なども実に多様です。小鉢仕立てで卓上に置けるものから、観葉樹として部屋の主役になる大型種まで幅広く、好みに合わせて選ぶ楽しさがあります。

また、フィカスは比較的丈夫で育てやすく、しっかりとポイントを押さえれば初心者でも長く楽しむことができる植物です。ただし、種類によっては葉を落としやすかったり、急に元気がなくなったりすることもあるため、「育てやすい」とされる一方で、意外と管理に悩む人も多いのが実情です。

ここでは、フィカスを室内で元気に維持するために知っておきたい基本情報や育て方を紹介します。

フィカス|種類豊富でインテリアにも映える

観葉植物として長年人気を誇るフィカスは、インテリアに映える美しい葉と、個性的なフォルムを持った品種が数多く揃っています。葉が大きくハート形をしている「ウンベラータ」、濃緑で光沢のある丸葉の「バーガンディ」、細葉で軽やかな印象の「ベンジャミン」、厚みのある葉と明るい斑が魅力の「アルテシマ」など、品種ごとに葉の姿も性質もまったく異なるため、「ひとつの属でここまで表情が違うのか」と思わされるほどです。

ここでは、そんなフィカスについて、基本的な情報を見ていきます。

フィカスとは?|基本情報を確認しよう

フィカス属(Ficus)はその種類の多さと姿の豊かさから、園芸・インテリアの両面で高い評価を受けています。見た目の印象は品種ごとに大きく異なりますが、いずれも「熱帯~亜熱帯地域に分布し、耐陰性があり、葉が美しく、剪定に強い」といった共通した特徴をもつ、初心者にも比較的育てやすい植物たちです。

植物学的な分類

「ゴムの木」と呼ばれることもあるフィカスは、実はイチジクの仲間です。具体的には下表のように整理できます。

亜科
バラ目クワ科クワ亜科イチジク属
RosalesMoraceaeMoroideaeFicus

属名である「Ficus」は、ラテン語の ficus(イチジク)に由来します。もともとは果実として食されるイチジクを指す語でしたが、独特の花嚢(隠頭花序:果実のような見た目の構造の花)を持つ多くの植物をまとめる属名としてこの語が定着したとされています。

原産地と生育環境

フィカス(Ficus)は、原生種だけで800種以上存在する、クワ科の中でも最大級の属です。観葉植物として親しまれるコンパクトな種類から、大きく育つ木やつる性の種類まで多様な姿を持つフィカスは、全世界に広く分布しています。

  • アフリカ
  • 東南アジア
  • 中南米

などの「高温多湿な」熱帯~亜熱帯にかけての林床で自生している種がほとんどです。

大きさと姿

フィカス属の植物は、大木になるものからつる性のものまで形態の幅が広く、樹高10mを超えるような種も存在します。観葉植物として流通しているものは、1~2mの樹高に整えられているものが多く、曲げや編み込みといった様々な仕立てがされています。最近では、高さ10数㎝程度の小苗を園芸店やネット販売で目にする機会が増えている印象です。

葉の形状についても、

  • 丸みを帯びた大きくやわらかな葉
  • 細くて肉厚な小型の葉
  • 光沢のある硬質な葉
  • 縁が波打っている葉
  • 葉先が垂れ下がる形状の葉

など、種ごとに多彩な表情を見せてくれます。

花言葉と風水的効果

フィカスの花言葉は、ウンベラータは「永久の幸せ」「夫婦愛」、ベンジャミンは「信頼」「友情」のように種によって様々です。前向きなメッセージが込められているものばかりなので、選ぶ時の1つの参考にしてみてもいいのではないでしょうか。

また、風水的には「調和」「成長」「家運向上」などの効果があると言われています。風水に興味がない人も、知っておくと活かせる機会があるかもしれません。

フィカスの特徴

フィカスは、同じ属内でも「ほんとに同じ植物?」と思わされるほど、葉の形や大きさ、幹の姿、色合いなどに大きなバリエーションがあります。このため、自分の好みに合わせた種を選ぶことができる、「初めての観葉植物」として育ててみるのにおすすめの植物種です。ここでは、そんな多様な性質を持つフィカスにある程度共通して言える特徴をもう少し掘り下げて見ていきます。

高湿度を好むが、乾燥にも比較的耐える

熱帯から亜熱帯に自生しているフィカスは、基本的には水が大好きで、空気中の湿度もある程度高いことを好みます。ただし、じめじめした空気が「停滞」していることは好きではないので注意しましょう。

一方でフィカスは、乾燥にもある程度耐える性質も持っており、数日であれば水をもらえなくても耐えることが可能です。太い根や幹、肉厚な葉といった植物自体に水分を蓄えることが可能だからです。とはいえ、「空気が乾燥している」状態には強くありません。特に葉が大きく薄い種はその傾向が顕著です。

寒さと蒸れには強くない

多くのフィカスの自生地は熱帯から亜熱帯の高温多湿な地域です。そのため、高湿度や暑さには強いですが、寒さには強くありません。5℃程度までの低温には耐えることもできますが、10℃以上の室温を維持するように気を付けましょう。特に、冬場の窓辺の冷気などには十分注意してください。

また、高温多湿な環境を好むフィカスですが、空気の停滞は大嫌いです。風が動いていれば、40℃程度までは耐えることができますが、無風の状態だと35℃前後で体調を崩し始めます。

強すぎる光は好まない

自生地では「大きな樹からの木漏れ日」を受けて育っているのがフィカスです。そのため、夏の直射日光のような強い光に当ててしまうと、葉焼けなどのトラブルの原因になります。とはいえ、暗すぎると病気や徒長の原因になります。室内の明るい窓辺くらいの光が最もフィカス好みです。

樹形を作り込む楽しさがある

多くのフィカスは、成長が速く剪定などによりどんどん新芽を吹いてくれます。種や個体によって多少の差はありますが、「樹高・枝ぶり・樹形・葉数」などを自分好みに作り込んでいけます。少し時間はかかりますが、小苗から育てて自分好みの形に仕上げることができれば、非常に大きな達成感を得ることができるはずです。

フィカスの基本的な管理方法

多くの種が存在するフィカスですが、ある程度の乾燥や日陰にも耐えてくれる育てやすい観葉植物という共通点があります。種類が豊富で様々な空間に合わせやすく、いくつかのポイントさえ押さえておけば管理もそれほど難しくない植物たちです。ここでは、そんなフィカスを元気に長く育てるためのポイントを紹介していきます。

日本は北海道から沖縄まで、南北に長い国土になっています。皆さんのお住まいの地域によっては、これから紹介する内容がそのまま当てはまるとは限りません。あくまでも目安として参考にしていただき、「自分の育てる環境」に合わせて調整していってください。

光の量と質が配置のポイント

フィカスは、比較的暗めの環境でも耐えることができる植物たちですが、本来は太陽の光が大好きです。強すぎる光は、葉焼けなどのトラブルの原因となりますが、基本的には「東向きや南向きの明るい窓辺」においてあげてください。ただし、種類によっては「窓越しの光でも強すぎると感じる」場合もあります。窓辺に置いていて「葉焼け」の兆候が見られるようなら、レースカーテン越しにする、直接光は当たらないが明るい場所に移動させるといった対策をしましょう。とはいえ、暗すぎる環境では徒長しひょろひょろと伸びた不格好な姿になったり、光合成不足で弱り葉が落ちやすくなったりしてしまうので気を付けなくてはいけません。徒長が見られるようであれば、より明るい場所へ移動させる、高演色のLEDライトや植物育成灯で光を補うなどの対策を取りましょう。日光の当たり具合や葉色の変化を観察して調整することが大切です。

西日には要注意!

西日は、赤色や赤外線といった光を多く含みます。日中の暑さが残る時間帯に、このような強い光に当てると「葉焼け」などのトラブルの原因となります。特に葉が薄かったり小さかったりするタイプではダメージが深刻になりやすいので要注意です。

西向きの窓しかない場合には、ミラー加工されたレースカーテンで光を和らげるようにしましょう。

温度と湿度に注意

フィカスの多くは、熱帯〜亜熱帯が原産です。高温多湿な環境を好むため、暑さには強い植物といえます。品種にもよりますが、湿度80%以上かつ40℃前後の気温でも元気な姿を保ってくれる種類がほとんどです。とはいっても、室内で湿度が高すぎるとカビなどの問題を招いてしまいます。こういった問題が発生しない範囲(80%程度まででしょうか?)で湿度を維持してあげてください。逆に、湿度が50%台になってくるとストレス症状が出始め、40%を切るような極端な乾燥状態になると、葉がぽろぽろと落ち、枝先から枯れてくるようになってしまいます。加湿器などで60%以上を維持できると理想的ですが、冬場などは結露によるカビを誘発しかねません。鉢の受け皿の下に水を張ったお皿やトレーをもう1枚引く、葉の周辺に霧吹きで水分を足してあげるなどの工夫をしてみてください。我が家はベランダ無しの環境のため、洗濯物と同じ部屋で管理することで湿度を補っています。

このように、高温多湿に強いフィカスであっても室内で「空気が停滞している」と話が変わります。フィカスは空気の停滞を嫌うため、空気が全く動いていない状態だと35℃前後で葉がしおれぐったりしてきたり、葉が黄色くなってきたりといった症状が出始めます。エアコンなどで、33℃以下の室温をキープできるのが理想的ですが、難しい場合には

  • 窓からの直接の太陽光を避ける(レースカーテン越しにするか置き場所そのものを変える)
  • サーキュレーターや扇風機で空気を動かす(最低でも換気扇は動かしておく)

ことで「無風+高温+強い光」という状況を回避してください。夏場の閉め切った室内は非常に高温になりがちなので、十分注意してくださいね。

また、フィカスは寒さに弱いという性質を持っています。5℃程度までであれば耐えてくれる種類が多いですが、このような低温にさらしてしまうと思わぬダメージ(低温障害など)につながります。室温は、最低でも10℃以上を維持するようにし、出来れば15℃以上のキープを目指してください。最近は真冬でも室温そのものが10℃を下回ることは少ないかもしれませんが、窓際は要注意です。ガラス越しの冷気などにより「局所的に5℃以下になっていた」ということが起こりえます。夜間に暖房を止めるという場合には特に注意しましょう。

冷暖房の直撃にも要注意!

エアコンやストーブの風は極端に低温や高温なうえに非常に乾燥しています。こういった風が直接当たると、「一気に葉先が枯れ込み、葉が落ちる」原因になるので、風向きを調整し直接風が当たらないようにしつつ、湿度を保つようにしてください。

土は水はけと保水性のバランスが重要

フィカスは、環境への適応力も高い観葉植物。そのため、どのような用土を使用しても「うまく管理できれば」元気に育てることができます。とはいえ、室内で安全に管理するには「フィカスが好む土=水はけがよく、乾きすぎないバランスの取れた土」を使ってあげるのが確実です。

フィカスは水をたくさん欲しがる植物ですが、「土や株元がずっとじめじめしている」ことは嫌います。そのため、水はけの悪い土だと根腐れを起こしやすくなります。一方で、あまりにも乾燥しすぎる用土だと水がすぐに吸い尽くされて「水やりが大変すぎる」という状況や「水切れで葉がしおれたり落ちたりしてしまう」ことにつながります。排水性と保水性の両方をほどよく備えた土がフィカスに合っているといえます。

実際に使う用土としては、市販の観葉植物用の土が最も手軽でおすすめです。ただし、有機質(特に堆肥など)が含まれている土は虫やにおいの原因になります。そのため、「室内向け」や「虫がわきにくい」などの表示がされているものを選ぶと良いと思います。

自分で配合したいという場合には、軽石(小粒):硬質赤玉土(小粒):鹿沼土(硬質・小粒)=1:1:1などがおすすめです。乾燥が気になる場合には保水性のある赤玉土を増やしたり、より水はけを重視したい場合は軽石の割合を増やしたりと、自宅の環境や水やり頻度に応じて調整してみてください。

我が家では軽石(小粒):硬質赤玉土(小粒):鹿沼土(硬質・小粒)=3:1:1に植えています。

乾湿のメリハリを意識して水やりを

フィカスたちは、基本的に水が大好きな植物たちです。ですが、土の中がずっと湿っているのはあまり好みません。水切れだけでなく、水のあげすぎもトラブルの原因となります。空気中の湿度が保たれていれば多少の水不足であれば耐えてくれるのがフィカスです。水やり頻度はやや少なめを意識し、あげるときにはたっぷりと水を吸わせてあげるようにしましょう。ただし、「春から秋は1週間に1回、冬は月に1回」というような決め方はトラブルにつながりかねないので注意が必要です。最初は面倒に感じるかもしれませんが、「植物の様子や土の様子を確認して水やりをする」ようにしてみてください。不安な方は、以下の季節ごとの目安を参考にしてみてください。

また、水をあげるときは「鉢底から水がしたたり落ちるようにたっぷりあげる」ようにしてください。表面だけにちょろっと水をかけるだけだと「土の中まで水がいきわたっていない」可能性があります。こうなると、根が完全に乾燥して枯れてしまう原因となります。

〈季節ごとの水やりの目安〉
  • 4~5月

    日長が長くなるのに合わせて、最低気温も10℃を下回らなくなり、暖房なしの環境でも植物が休眠から目覚めてきます。あくまでも乾燥気味を意識し、「土の表面が乾いたら1~2日待って水やりをする」ようにしてください。

    この時期我が家では、週2回の水やり(毎週水曜日と土曜日)です。水やり翌日に表面がほんのり湿っている程度→水やり2日目には用土表面が乾燥→さらに1~2日待って水やり というサイクルになっています。

  • 6~8月

    最低気温が安定して15℃を超えるフィカスが最も元気に生育する時期です。この時期は活発に水を消費するので、水切れしないようにたっぷりと水やりをします。目安は「土の表面が乾いた翌日に水やりをする」です。

    ただし、水やりの時間帯には注意が必要です。この時期は日中の気温や日差しが強くなるため、エアコンを使用していたとしても窓辺の室温は40℃を超えることもあります。このような時間に水を与えてしまうと、根っこが茹で上がってしまうので絶対に避けてください。水やりの時間帯は「朝の9:00までか、夕方16:00以降」にしましょう。

    この時期我が家では2日に1回の水やりが基本です。水やり翌日には用土表面がほぼ乾燥しているので、その翌日に水やりをするというサイクルです。

  • 9~10月

    日長が短くなり、最低気温が10℃を下回る日がでてきます。暖房なしの環境だと植物の活動が緩やかになり、休眠するようになります。春に2日で乾いていた土が1週間乾かなくなるなどの変化がみられるようになると休眠の合図です。休眠中は「根っこが乾きすぎないように維持」することが水やりの目的になります。様子を見ながら、水やりの頻度、量ともに減らしていきましょう。

    暖房により「最低室温が15℃を下回らない」場合、成長自体は続けています。ただし、補光していない場合は、日長の短さにより使う水の量が少なくなるので「今までと同じ水の量」だと蒸れや徒長につながります。水やりの頻度は控えめを意識するようにしてください。

    我が家ではこの時期ストーブを炊き始めるので、室温は15℃以上にキープされています。そのため、この時期の水やりは週2回ペース(4~5月と同様)で行っています。

  • 11~3月

    日照時間が非常に短く、最低気温も5℃以下になる時期です。暖房を入れない場合、最低室温も5℃を下回る可能性があります。

    フィカスは10℃を下回るとその成長は非常に緩やかになり、休眠し始めます。また、5℃近くになると低温障害になるリスクが急激に高まります。もし最低室温が10℃以下になる場合には、発泡スチロールで簡易的に囲うなどにより、保護してあげてください。

    暖房などにより最低室温が10℃を下回らない場合は、9~10月と同じ対応で構いません。

    この時期の我が家はストーブが1日中ついています。15℃以上の室温がキープされるため、この時期でも植物が成長します。そのため、水やりは週2回ペース(4~5月と同様)でしっかり行っています。

冷暖房の使用状況や部屋の湿度、使う土の種類、鉢の大きさによって、乾き方は大きく変わります。慣れてきたら、「葉が少ししおれてきたら水やりをする」など、種類や自分の環境に合わせたタイミングを見つけてみてください。

肥料は必要?

フィカスは、観葉植物の中でも「肥料好き」な部類の植物たちです。適切な時期に適切な量を与えることで、大きく元気に育ってくれます。肥料無しでもすぐに枯れてしまうことはありませんが、体力不足で「葉色が悪く葉数も少ない」株になりやすくなります。弱々しい株にならないためにも、適切に肥料は与えるようにしましょう。

濃すぎる肥料は逆効果

濃度の高い肥料は鉢の表面や株元に藻やカビを発生させ、病気や腐敗につながる恐れがあります。肥料を与える場合には「薄めから初めて様子を見る」ようにしましょう。

肥料の種類

肥料
タイプ
形状使用用途使用対象
(推奨)
効き方メリットデメリット代表例
有機固形元肥屋外栽培ゆっくり・土の中の微生物を活性化し、土を豊かにする・臭いが発生する
・虫の発生源になる
・効き始めが遅い
・堆肥
・油かす
有機固形元肥
追肥
屋外栽培ゆっくり・効き方が穏やか
・根への負担が小さい
・臭いが発生する
・虫の発生源になる
・効き始めが遅い
・有機ペレット肥料
有機液状追肥屋外栽培ゆっくり・効き方が穏やか
・根への負担が小さい
・臭いが発生する
・虫の発生源になる
・効き始めが遅い
・発酵魚エキス液
化成固形元肥室内外ゆっくり・無臭で虫がわきにくい・連続使用による土への塩類蓄積マグァンプK
化成固形追肥室内外
(鉢植え)
ゆっくり・無臭で虫がわきにくい
・鉢のふちに置くだけで手軽
・連続使用による土への塩類蓄積
・水やりの量や温度により溶解速度が変わる
・溶解時に局所的な濃度が高くなり肥料焼けしやすい
・プロミックシリーズ
・グリーンそだちEX
化成液体追肥室内外
(鉢植え)
速い・無臭で虫がわきにくい
・吸収が速く効果が見えやすい
・濃度調整しやすく肥料焼けを防ぎやすい
・連続使用による土への塩類蓄積
・都度、希釈又は溶解が必要があり手間
・微粉ハイポネックス
・ハイポネックス原液
・住友液肥

肥料にはその成分の種類によって、有機肥料と化成肥料と呼ばれる2パターンがあります。インテリアグリーンとしてフィカスを室内で管理する際に与える肥料としては、化成肥料のほうがおすすめです。有機肥料には、どうしても臭いが出やすいことや、コバエなどの虫が住み着きやすいというデメリットがあるからです。

また、肥料は固形タイプと液体タイプにも分けられます。フィカスは水だけでなく肥料も欲しがる部類の観葉植物です。大きく育てたいという人は、液体肥料をメインとしつつ置き肥を併用してみてください。

マグァンプKなどの元肥を使用することで、肥料切れのリスクを減らすことができます。こまめに肥料を与えていけるか心配という人は、元肥は必ず入れておきましょう。

肥料を与える時期と与え方

「フィカスは肥料が好き」な観葉植物です。とはいっても、与える時期や量を間違えると逆効果になってしまいます。トラブルを避けて元気に育てていくために、肥料のタイプに合わせた上手な使い方を押さえておきましょう。

<液体肥料を使う場合>

4月〜9月の生育期に「パッケージ記載の規定倍率の2〜3倍に希釈」して与えるのがおすすめです。4~6月は水やりの2回に1回を液体肥料に、7~9月は水やりの4回に1回を液体肥料に置き換えるようにしてみましょう。早く大きく育てたいという人は、もう少し濃いめでも構いません。ただし、「濃すぎる肥料は逆効果」ということは常に意識してください。あくまでも、「パッケージに記載の希釈倍率を上限」として少しずつ濃くしていくようにしてください。

濃すぎる肥料は、根腐れや葉焼けの原因になります。肥料を与えるときは、必ず薄めの濃度から始め、徐々に調整してください。

<固形肥料(置き肥)を使う場合>

与える時期は5月~7月前半の最も成長する時期です。与える量は「パッケージに記載の容量よりやや少なめ」にして、鉢の隅に置くようにしてください。本格的に暑くなる7月後半以降は取り除くことをお勧めします。

また、固形肥料には「効果の持続期間」も設定されています。個人的にはパッケージに記載の期間の1.5倍くらいの期間は効果が持続していることが多いと思います。5月に置き肥を与えたら、次の年までそのまま水やりだけで管理していても問題ないことが多い印象です。

<置き肥と液肥を併用する場合>

置き肥は必ず「規定量の半分以下の量」にし、効果期間が2ヶ月以上に設定されている場合は、7月に入ったら取り除くようにしてください。液肥は、希釈倍率を「規定の3~5倍に希釈」するようにします。液肥を与える頻度は、液体肥料のみを使用する場合と同じで構いません。(我が家はこのスタイルです。)

液体肥料を与えるときの注意点

液体肥料を与えるときは、水やりの時と同じように「鉢全体にまんべんなくいきわたるように、鉢底から滴るまでたっぷりと掛け流す」ようにしてください。もったいないからと、ちょろちょろと与えるだけでは、効果を十分に得られない可能性があります。

冬期(10〜3月)の扱い

この時期は室温の低下と日照時間の短縮により、フィカスの成長は非常に緩やか(場合によっては休眠)になっています。そのため、乾燥を避けるための加湿や、最低限の水やりを意識して管理しましょう。基本的に肥料はなしで問題ありません。ただし、暖房などで最低室温が15℃以上あり、生育している様子がみられる場合は、「薄めの液体肥料(規定の5倍程度に希釈)を月に1回程度」を目安に、与えてあげると元気に育ちます。

植え替えと剪定で健康を維持しよう

フィカスは、生育旺盛な観葉植物の一つです。そのため、放っておくと枝葉がどんどん伸びて姿が乱れてしまうことがあります。また、何年も同じ鉢で管理していると、根詰まりを起こして生育に悪影響を与えるだけでなく、鉢を変形させてしまうこともあります。そのため、適切なタイミングで剪定や植え替えを行うことは、フィカスを元気に育てていくうえで欠かせない作業です。

ここでは、剪定や植え替えの目的や適期、手順について、見ていきます。見た目の調整や株の健康管理はもちろん、葉の密度や形を整えることでインテリア性も大きく向上します。フィカスを長く楽しむためにも、ぜひタイミングを見極めて実践してみてください。

フィカスは樹液にラテックスという成分を含みます。このラテックスにより傷口を保護する効果を高めていますが、皮膚につくと痒みや発疹を起こす可能性があります。また、床などに垂れてしまうとなかなかとることができません。剪定や植え替えの際には、手袋や新聞紙などを用意し、手や床に樹液がつかないように気を付けて作業するようにしてください。

剪定の目的・タイミングとその手順

フィカスは、何もせずに育てていくと「上へ上へとまっすぐ伸びていく」タイプの植物で、枝分かれや脇芽の展開が自然に起こることはほとんどありません。そのため、放っておくと背が高くなりすぎたり、全体のバランスが崩れてしまったりすることになります。自分好みの枝ぶりや樹高にするには、剪定で整えるか、曲げにより樹形を変える必要があります。また、ある程度の枝数になっているフィカスでは「葉の密集による蒸れ」によるトラブルの可能性も出てきます。剪定は、風通しを良くしたり、病気の発生を防いだり、脇芽を促してボリュームを出したりといった重要な役割があります。

3つの剪定タイミング

フィカスは、生育旺盛で剪定にも強い観葉植物です。とはいえ、剪定には「目的とそれに応じた適切な時期」があります。植物へのダメージを最小限にとどめ、健康で自分好みの姿のフィカスにしていくために、目的別に「剪定に適したタイミング」を把握しておいてください。

剪定するときの注意点
  • ハサミやナイフは切れ味の良いものを用意し、必ず殺菌消毒してから使用してください。
  • 傷口はナイフできれいに整え、必要に応じて殺菌剤や癒合剤を使用してください。
大きく樹形を変えたいとき

枝数を増やしたり、高くなりすぎた樹高を低くしたりしたい場合には、思い切って太い枝や幹を切る「強剪定(切り戻し剪定)」が必要です。このような大きな傷口ができる剪定は、植物へのダメージが大きくなるので、「室温を15℃以上でキープできる」環境で行うようにしてください。目安はゴールデンウイーク(GW)後です。この時期に切り戻してあげれば、1~2ヶ月で複数の新芽が吹いてくれるはずです。また、切った先の枝は、挿し木(挿し芽)により新しい株として育てることが可能です。置き場所に困らないのであれば、ぜひそちらにも挑戦してみてください。

  • 強剪定は理想的には20℃以上の温度を維持したうえで実施したいところです。可能であれば、剪定後に新芽が出てくるまでは「20℃~28℃の室温を維持」してあげてください。6月中旬~7月上旬ならこの室温を維持しやすいと思います。7月後半から8月上旬の昼間の室温上昇や、お盆以降の夜間の冷え込みには十分気を付けてくださいね。
  • 大きく切り戻した後は、水の消費量が著しく低下します。水をやりすぎて根腐れさせてしまわないように、強剪定後は土の状態をしっかり確認して水やりをするようにしてください。
好みの樹形をキープしたいとき

増えすぎたり伸びすぎたりした枝を整え、樹形を維持したい場合にも剪定は必要です。こういった枝を放っておくと、見た目が悪くなるだけでなく蒸れによるトラブルの原因にもなってしまうので注意が必要です。混みあった枝や不要な枝、伸びすぎてしまった枝は、軽く剪定してあげてください。GW後かお盆明けの暑すぎない時期がおすすめですが、多少であれば夏場に切ってしまっても大丈夫です。

  • 軽い間引き程度の剪定でも、35℃を超えるような日は控えるのが無難です。真夏は避けるようにしましょう。
  • 枝が伸びすぎた原因が「徒長」である場合、剪定とともに環境も見直すことが必要です。日当たりの良い位置に動かし、肥料を少し減らすなどの対応をとってください。
病害虫被害の拡大を防ぐ必要があるとき

カイガラムシやハダニが発生していたり、葉や枝が黒く柔らかかったりという場合には緊急の剪定が必要なことがあります。

カイガラムシやハダニは見つけ次第、指やブラシで物理的に除去するべきですが、大量に発生してしまった場合には、葉や枝ごと切り取ってしまうほうが確実です。

また、枝や葉が黒く柔らかくなっている場合には根腐れや軟腐病が疑われます。柔らかくなってしまった箇所を早急に剪定するとともに、鉢から取り出し根の状態を確認しましょう。腐っている根っこは除去が必要です。

  • 冬場や真夏にこのような状況になってしまった場合には、エアコン等で「15℃~30℃に室温を維持」して作業とその後の管理を行ってください。
  • 根腐れや軟腐病の場合には、根や株元が完全に腐ってしまっている場合もあります。柔らかくなってしまっている部分だけでなく、根や枝に茶色や黒に変色した部分がなくなるまでしっかり切除し、殺菌処理をしてください。挿し木により発根しなおすことで復活できる可能性にかけましょう。
剪定の具体的な手順

剪定は、自分好みの樹形に整えたり、病害虫の発生を防いだりするために、欠かすことのできない作業です。いざ剪定するというタイミングで「どうしたらいいの?」と困らないように、基本的な手順を押さえておいてください。

〈剪定の手順〉
  • Step 0
    剪定する位置を考える

    剪定は、なんとなく枝を切ればいいというものではありません。日ごろから「理想の姿」を思い浮かべ、

    • どこが伸びすぎているか
    • どこのボリュームが足りないか
    • 葉が多すぎて光や空気の通りが悪くなっているところがないか
    • 虫や病気の兆候がないか

    といった点を把握しておいてください。

    フィカスは、葉の付け根の部分に「新芽の元」になる成長点があります。剪定により枝の先端の成長点がなくなると、先端に近い方から1~3つくらいの成長点が動き出し新芽を出してくれます。この性質を利用することで、「このくらいの位置で、こっちの方に枝を伸ばさせたい」といったコントロールをしていくことができます。

    作りたい樹形にもよりますが、内側に葉や枝が集まらないように、「外向きの新芽が出やすい位置でカットする」のが基本的な考え方です。

    丸坊主(剪定と同時にすべての葉っぱを取り除いてしまう)にすると、先端が優先(頂芽優勢の法則)に関係なく、下の方からでも「エネルギーを蓄えた元気な成長点」がどんどん動きだすことがあります。一気に枝数を増やしたい場合などは、思い切って丸坊主にするのも選択肢の一つです。

  • Step 1
    道具の準備

    剪定に必要なのは何といっても「よく切れるハサミやナイフ」です。切れ味が悪いと、枝が裂けたり、枝をつぶしてしまったりといった「不要なダメージ」を植物に与える原因となります。ハサミはケチらず切れ味の良いものを用意しておきましょう。

    ハサミやナイフは、使用前に「ガスコンロなどで焙る」「アルコールやハイターで消毒する」といった方法で殺菌し清潔な状態にしておくことも重要です。面倒がらずに必ず殺菌済みの刃物を使うようにしましょう。

  • Step 2
    剪定する

    自分の作りたい理想の姿のイメージと道具の準備ができたら、いよいよ実際の剪定です。

    希望の位置、高さ、向きを確認して「節」の少し上でカットしていきます。季節や傷口の処置の仕方によっても変わってきますが、あまりにも節から離れた位置でカットすると「枯れ下がり(枝枯れ症)」という現象が起き、枝や株そのものが枯れてしまうこともあるので気を付けてください。

    また、カットするときは、「できるだけ傷口が小さくなるように切る」のが失敗しにくい方法です。斜めに切ることで「育ってきた後の切り口の不自然さを減らす」とおっしゃる方もおられますが、傷口が大きくなるとそれだけ失敗のリスクが高くなります。慣れないうちは特に「断面を小さくする」ことを意識しましょう。ハサミでカットした後の傷口をそのままにせず、ナイフできれいに整えておくことも失敗を減らすポイントです。

    強剪定により太い枝や幹を剪定した場合には、殺菌剤や癒合剤を傷口に塗っておくと枯れや病気の予防になります。必要に応じて使用してください。個人的には、樹液を洗い流し、アロンアルファで傷口をすぐにふさいでしまうのがおすすめです。ただし、「本来の使い方」ではないので、何かあってもあくまでも自己責任ですのでご注意を。

  • Step 3
    剪定後の管理

    剪定後の管理は、どのような剪定をしたかによって変わってきます。

    <強剪定した場合>

    枝や葉数が極端に少なくなっています。蒸散量が大きく減るため、土の状態をよく確認し「しっかり乾いたらたっぷり」の基本を守ってください。何も考えずに今まで通りの水やりを続けてしまうと根腐れにつながります

    <軽剪定の場合>

    混みあっている枝だけを間引いた、今年伸びた枝を少しだけ切り戻した、といった場合には植物へのダメージはほぼないと思って構いません。人間の散髪と同じような感覚です。基本的には普段通りの管理で問題ありませんが、普段よりも水の吸い方が遅くなる可能性があります。用土が乾きにくい場合には、やや控えめの水やりに切り替えてください。

    <緊急剪定の場合>

    多くの場合、植え替えもセットで行います。患部を切除し、根を整理するという「大手術」を行ったイメージです。優しい光が入る、風通しの良い暖かい場所で1ヶ月程度養生させてあげましょう。新芽の展開が確認でき、株がぐらつかなくなったら徐々に通常の管理場所に戻してあげてください。

1回の剪定で完璧を求めてはいけない

フィカスは生育旺盛で、毎年かなりの数の葉を展開し、枝の長さも長くなります。一度剪定したとしても、1年後には「思った形になっていない」となることがほとんどです。定期的な剪定により、少しずつ自分好みの姿を作り上げていくという意識が大切です。

植え替えの目的・タイミングと手順

フィカスを健康に育て、長く楽しむためには、定期的な植え替えが欠かせません。何年も植え替えていないと、根詰まりや土の劣化による排水不良、病害虫の蔓延といったリスクが高まってしまいます。これらが進行すると株全体に大きなダメージを与えるので注意が必要です。このようなリスクを回避するためにも、適切なタイミングでの植え替えをしてあげてください。

植え替えのタイミングは3つ

植え替えは、フィカスの健康状態を維持するうえで極めて重要な作業です。適切なタイミングで行えば、根詰まりや病害を防ぐとともに、強くたくましい株に育てていくことができます。一方で、植え替えはフィカスにとって大きなストレスにもなります。適切なタイミングを知ることで、不必要な植え替えで過度なダメージを与えることがないようにしてください。

購入直後

園芸店やホームセンターで植えられている土は、「室内で管理するには水の持ちがよすぎる」土であることが多いです。また、生産者の方や販売店の店員さんがどれだけ気を付けていても「害虫が潜んでいる」可能性をゼロにはできません。大型の株であれば、鉢の中がすでに根詰まりしていることもあります。そのため、自宅にお迎えした時点で「新たな土で新生活をスタートさせてあげる」のがおすすめです。

とはいえ、本来は場所の移動をする(大きく生活環境が変わる)ことがないのが植物です。生産者→販売店→自宅という長旅でフィカスたちは疲れています。自宅に迎えてから1週間程度は植え替えをせず、「この場所で育てたい」という場所で、環境に慣れさせてあげてください。(明らかに虫がいるなど様子がおかしい場合はすぐに植え替えるほうが安全です。)

  • 冬場に健康な株を自宅に迎え入れ、最低室温が15℃を下回るという場合はGW後の少し暖かくなる季節まで植え替えは待ったほうが安全です。
  • 夏場に健康な株を自宅に迎え入れ、最高室温が35℃を超える場合は8月後半の少し涼しくなる季節まで植え替えを待った方が無難です。
前回植え替えてから1~2年後

フィカスは、品種にもよりますが、植え替えて2年もたつと「鉢の中は根っこでパンパン」という状態になりがちです。根詰まりを起こしてしまうと、根は吸水や酸素の補給がしにくくなり、根腐れや乾燥しすぎで枯れるということになってしまいます。そうなってしまう前に、定期的に植え替えてあげましょう。

※植え替え作業は、休眠から目覚め始めるGW明けの最低気温が15℃を下回らなくなった時期がおすすめです。植え替えにより消耗した体力をスムーズに回復できます。また、夏場の植え替えは「高温多湿」により思わぬダメージが出るリスクが高まります。エアコン等で33℃以下の室温を常にキープしている人以外はこの時期の植え替えはできれば避けるようにしましょう。

※暖房等で最低室温が15℃を下回らない環境であれば、冬場でも問題なく植え替えることが可能です。

害虫や病気が疑われる場合

病気や害虫が発生している状態を放置しておいてもなにもいいことはありません。症状が悪化していくばかりです。特に夏場は症状の進行が速くなるので、病気や害虫の被害が疑われる場合には、「多少環境が整っていなくても」速やかに植え替えて、薬剤処理などの対処をするようにしましょう。

冬場でも症状が進行していく場合には植え替えが必要です。最低室温が15℃を下回らない環境を作り、植え替え+薬剤処理などの対処をしてください。

植え替えの具体的な手順

植え替えは、フィカスを健康に育て続けるために避けては通れない作業です。いざ植え替えをするというタイミングで「どうしたらいいの?」と困らないように、基本的な手順を押さえておいてください。

<植え替えの手順>
  • Step 0
    株の植え替え準備

    植え替えの数日前から水やりをストップし、用土をできるだけ乾かしておくと植え替えがスムーズになります。必須とは言いませんが、できれば用土は乾かしておきましょう。

    水苔など、濡れているほうが用土から取り出しやすい場合もあります。

  • Step 1
    新しい鉢と用土の準備

    まず必要になるのが、植え付けるのに必要な鉢と用土です。用土については水はけのよい土を準備してください。鉢については、株の大きさを見てバランスをとるのが基本です。あまり大きくしたくない場合には、少し根を整理したうえで同じ大きさの鉢に、どんどん大きくしたいという場合には、根は極力いじらずに1~2回り大きい鉢に植え替えてあげるのが良いと思います。

    鉢選びの注意点

    大きすぎる鉢は、乾燥が遅くなって根腐れさせる原因になります。一方で、小さすぎる鉢ではすぐに根詰まりしてしまうので気を付ける必要があります。

  • Step 2
    植え替え

    鉢と土の準備ができたら、実際に植え替えていきます。

    まず、優しく丁寧に今植わっている鉢からフィカスを取り出してあげましょう。株元を手で支え、鉢の側面や縁を軽くたたいてあげると抜けやすいと思います。株自体をぐいぐい引っ張るのではなく、あくまでも鉢を動かすようにしてください。

    鉢から抜けたら、古い用土を軽く落とします。この時に無理やり土を落とそうとすると根っこを必要以上に痛めてしまいます。土は優しく丁寧に取り除いてください(無機質の用土を使用している場合は、軽く振るだけでほとんどの用土が取れると思います)。用土が落とせたら、古くてダメになっている根っこや枯れてしまっている下のほうの葉をきれいに取り除いてあげましょう。あまりにも長く伸びすぎている根っこは、鉢のサイズに合わせてカットしてしまって構いません。

    次に、新たに植える鉢に鉢底ネットを敷き、その上に用土を少し(鉢底から1/4~1/3程度)入れます(鉢底石を入れるという方も多くおられますが、私は、無機質の用土(=非常に排水性がよい用土)を使う場合は不要だと思っています。有機質の用土を使用する場合は鉢底石も敷くほうがよいかもしれません)。

    そして、先ほど取り出したフィカスを鉢の中央に配置し、根が均等に広がるように意識しながら、隙間を用土で埋めていきます。無機質用土であれば、鉢の側面を軽くたたきながら用土を入れていくことで、土と根の間に隙間を作ることなく用土を入れていけます。

    有機質用土の場合は鉢をたたくだけでは隙間ができやすいです。あらかじめ竹串などを根の隙間にさしておき、用土を入れる際に鉢の側面をたたくとともに竹串を軽くゆすってあげると隙間を少なくできます。

    有機質用土を使用する場合には、ウォータースペースと呼ばれるスペースを少し取っておくと良いかもしれません。ただし、鉢の縁と表土の間に段差ができることで株元の通気性は悪くなります。無機質中心の排水性の良い用土を使用する場合にはウォータースペースを無理に設ける必要はありません。

  • Step 3
    仕上げ

    土を入れ終わったら、鉢底から滴るようにしっかりと水やりをします。この時、初めは用土に含まれる粉塵や汚れが流れ出ます。流れ出る水がきれいになるまでしっかりと水を掛け流してあげてください。

    根を大胆にカットし整理した場合は、植えつけ後2~3時間程度時間を置き、土の中で切り口にかさぶたが軽くできるのを待ってから水やりをするとより安全です。根は乾燥しすぎに弱いので、乾かしすぎは禁物ですが、「乾いていない切り口から雑菌が入る」と根腐れなどを起こす原因となります。

  • Step 4
    植え替え後の管理

    植え替え後はフィカスの体力が落ちています。1週間程度は元の場所よりも少し暗め(例:窓越しの日光で育てていたのを、1週間はレースカーテン越しの光にする)で管理して、体力を回復させてあげてください。

    また、植え替え後の2週間程度は根がしっかり張っていないので、肥料はひかえるのが無難です。特に大きく根を整理した場合にはやや長め(1ヶ月程度)に様子を見るようにしてください。

    種類によって(例:パンダガジュマルなど)は、植え替え直後は水がうまく吸えずに葉がぽろぽろと落ちてしまうものもあります。こういった場合には、透明のビニール袋をかぶせて葉からの蒸散を抑えるようにしてください。この時に直射日光に当ててしまうと蒸れてしまうので、その点には要注意です。

注意すべき害虫や病気・生理障害と対処法

フィカスは比較的丈夫な観葉植物で、害虫や病気の発生もそこまで多くはありません。ただし、「空気が乾燥しすぎている」「通気が不足している」「光量が少ない」といった状況になると、思わぬトラブルを引き起こすことがあります。発見が遅れると根や葉に深刻なダメージが残ることもあるため、早期に対処することが大切です。

ここでは、フィカスを育てる際に特に注意したい害虫や病気、生理障害について、原因や症状、予防策について見ていきます。

フィカスによく出る害虫

室内で管理する観葉植物であるフィカスは、購入時にしっかりと確認し、適切な植え替え処理をしていれば害虫に悩まされることは多くないと思います。とはいえ、植物を育てるうえで虫の被害をゼロにすることはできません。発生してしまったときに、適切に対応できるように特に気を付けておくべき害虫について知っておいてください。

カイガラムシ

カイガラムシは、フィカスを育てるうえで最も注意すべき害虫で、葉が密集しやすい種や葉が薄い種で特に注意が必要です。年間どの時期でも発生する可能性があります。特に、暖かく比較的乾燥している時期に発生率が高くなるので気を付けてください。発生すると、葉の付け根や根の分岐点に寄生し、養分を吸い取ってしまうことで、黄変や枯れにつながります。また、放置していると病気(すす病など)を誘発することもあります。

幼虫のうちは薬剤の使用で駆除可能ですが、成虫になると白や茶色のかたい殻をかぶってしまい薬剤が効きにくくなります。見つけたら、葉や根を傷つけないように注意しながら、指や歯ブラシなどでこすり落とすかピンセットでつまんで取り除きましょう。

ハダニ

ハダニは、暖かく比較的乾燥している時期に発生しやすい害虫です。カイガラムシとともに、フィカスに発生しやすい害虫で、葉数が多い種や葉が大きく薄い種で特に注意が必要です。葉の隙間などに寄生し養分を吸い取ります。その結果、葉にかすれて色が抜けたような斑点が出てきたり、葉裏がざらざらしたような質感になったりします。葉の表面にクモの巣のような糸状のものがついていたら要注意なのでしっかり観察し、水をしみこませた布巾などで丁寧に拭き取るようにしてください。この時、薬剤を混ぜた溶液を使うとより効果的です。大量に発生してしまった場合には、特にひどい葉や枝は取り除き、薬剤で処理しましょう。葉のほこりなどを落とすためにも、定期的に葉水をしたり、優しく拭いてあげたりすると安心です。

アブラムシ

春や秋口に発生しやすいのがアブラムシです。基本的には「購入時についていた」という場合がほとんどなので、葉裏や新芽、若い(緑色)枝に寄生していないかを確認したうえで購入しましょう。発生してしまうと、葉が縮れたり新芽がつぶれたりしてしまうだけでなく、病気(すす病など)を誘発することもあります。葉が柔らかく小さい種では被害が深刻になりやすいので特に注意が必要です。発見した場合には、指や歯ブラシなどでこすり落とすか水で洗い流すようにしてください。大量に発生してしまった場合には、特にひどい葉や枝は取り除き、薬剤で確実に処理しましょう。

コバエ

フィカスに限らず、植物を育てていると、鉢からコバエがわくことがあります。コバエは湿った用土(表面から5㎝程度までの深さ)に卵を産みそこから発生します。特に気温、湿度ともに高い時期は要注意です。ただし、鉢表面が乾燥していて、餌となる有機物が少なければ発生するリスクは下がります。無機質の用土でフィカスを育てている場合にはあまり心配しなくてもいいかもしれません。

発生しても直接植物に害を与えることは少ないですが、鉢の付近を飛び回り非常に不快になります。鉢表面が常に湿っている状況を作らないように気を付けましょう。

フィカスで注意すべき病気・生理障害

フィカスは病気にも比較的強い観葉植物です。とはいえ、風通しや日照条件により病気になってしまうことはあり得ます。初期症状をしっかり見抜き、早期に対応できるようになっておくと安心です。

根腐れ

過湿(用土がいつまでもぐずぐず湿っている)による根の窒息又は糸状菌(カビ)の発生が原因で起こります。特に、35℃以上や10℃以下の気温の時に用土が湿り続けていると致命傷になりやすいので警戒が必要です。

初期症状は葉のハリがなくなることで、水切れと勘違いしやすく発見が遅れがちになります。この時水をやりすぎるとさらに進行し、根が黒く溶け出す症状が出ます。このころには、用土の乾き方が明らかに遅くなるので、そのような症状が見られたら一度鉢から抜いて根の状態を確認するべきです。重症になると株元がぶよぶよになり、自立できずに倒れてしまいます。

水はけの良い用土と、水やり後の通気確保が最大の予防策です。

軟腐病

根や葉の傷口から細菌が侵入し、植物の組織を急速に溶かしてしまう病気です。植え替えや剪定の際に、傷口の処理が不十分な場合に発生しやすく、悪臭を発しながら短期間(場合によっては1~2日)で一気に株がぐずぐずになってしまいます。

植え替えなど、フィカスに傷をつけてしまった際には、的確に処理をしてあげてください。また、ハサミやナイフなどを使用する前には、「ガスバーナーで焙る」などの殺菌作業を確実に行うことも重要です。

葉焼け

夏の西日や強すぎる育成ライトに当たり続けることで、葉先や葉の表面が黄色~茶色に変色し枯れ込んでくるのが葉焼けです。黄色のうちに避難させればそれ以上の進行は防げますが、一度焼けてしまった葉は元には戻らないので注意しましょう。葉が薄い種や斑入り(特に黄斑や白斑)種は特に焼けやすいので注意してください。

西日しか取り込めない場合には、夏場だけでもレースカーテンなどで遮光するのがおすすめです。

黒斑病

葉に褐色~黒色の丸い斑点がぽつぽつと出現する真菌(カビ)性の病気です。初期は褐色で、次第に病斑が大きく黒くなります。湿度が高く風通しの悪い状態が続くと発生しやすく、進行すると葉全体が腐敗していきます。普段からサーキュレーターで風を循環させ、蒸れを防ぐことが重要です。

発症してしまった場合には、清潔なはさみなどで取り除き、薬剤散布をすることで対処してください。

褐斑細菌病

葉に「水がしみたような斑点」ができてくるのが褐斑細菌病です。原因となる菌はもともとフィカスと共存していることもあります。夜間に葉に水滴がついていたり、多湿な空気が滞留していたりすると発生しやすくなります。風通しを良くし、日ごろから「空気が滞留しない管理」をしておくことで発症を防ぎましょう。

発症してしまった場合には、清潔なはさみなどで早めに切除することで対処してください。

すす病

カイガラムシやアブラムシなどの害虫が葉につくと、直接的な被害だけでなく排泄物による病気の誘発も起こります。その代表例がすす病です。すす病になると、葉が黒く煤けたようになり光合成ができなくなります。結果として、株の体力が落ちてしまいさらなる病気や害虫の被害を受けやすくなります。特に、細菌系の病気は厄介です。菌そのものは植物と共存しているため、株の体力が落ちると一気に発症につながりかねません。風通しを意識しつつ、害虫を発見したら即駆除することで、すす病の発生を予防しましょう。

フィカスを育てていて起こりやすいトラブル

フィカスは、小鉢サイズからシンボルツリーサイズまで、「空間をオシャレに彩ることができる」観葉植物として根強い人気があります。観葉植物の中でも、比較的育てやすい部類に入るフィカスですが、育てていく中でトラブルに遭遇することもあります。ここでは、フィカスを育てる中でありがちなトラブルについてみていきたいと思います。

葉が垂れたりしおれたりしてきた

特に、葉数が多い種や葉が薄い種に出やすい症状で、この症状の原因は「水切れ=葉からの蒸散量が根からの吸水量を上回っている」ことです。要因としては、

  • そもそも水やりの量や頻度が不足していた
  • 根腐れ、根詰まり、肥料焼けなどにより根が水を吸えない状態になっている
  • 高温や空気の乾燥により蒸散量が著しく増えていた

といったことが考えられます。単に水やりがきちんとできていなかった場合は、たっぷりと水をかけてあげることにより数時間から半日程度で回復してきます。この時、強すぎる光やエアコンなどにより空気が乾燥しすぎていないかも同時に確認し、必要であれば加湿器や葉水により株回りの湿度を高めてあげてください。

水やりをしっかりと行い、湿度を見直しても回復しない場合は、根がきちんと吸水できない状態になっている可能性が極めて高くなります。1度鉢から抜いて根の状態を確認してください。たんに根詰まりしているだけであれば、一回り大きな鉢に植え替えてあげることで回復します。一方、蒸れや低温、肥料焼けなどにより根腐れしてしまっている場合には、腐ってしまった根を取り除いて植え替えるとともに、環境の見直しが必要です。空気が停滞して蒸れていた、冬場の窓際で冷えすぎていたなどの、そもそもの原因を解決できるように置き場所を見直しましょう。

幹がぐらぐらする、株元が黒くなっている、幹が柔らかくなっているなどの症状がある場合には重度の腐敗の合図です。早急に腐って枯れている部分を取り除き、殺菌したうえで植え替え、風通しの良い日陰で乾燥気味に管理するようにしてください。

葉が黄色くなって落ちてきた

基本的に緑色のフィカスの葉色が黄色く変色し落葉する原因は、「自然な代謝」と「何らかのストレスによる反応」のいずれかです。「下葉が徐々に黄色くなり乾燥して落ちる(他の葉は元気な状態を維持できている)」場合には代謝による葉の更新なので気にする必要は全くありません。自然現象です。

一方、

  • 新葉の方まで黄色く変色している
  • 短期間で症状が進行して枯れ落ちてきたる

という場合には注意が必要です。

  • 夏の西日や近すぎる位置での育成ライトなど強すぎる光が当たっていないか
  • 暗すぎるところに置いていないか

を確認してください。光が強すぎる場合には葉焼けが原因なので、レースカーテン越しに光にするなど「少し光を弱めてあげる」対応が必要です。一方で、暗すぎて葉の維持ができなくなっている場合は「徐々に明るい場所に移動させる」ようにしてください。急に明るい場所に移動させると、光を処理しきれずに葉焼けにつながってしまいます。

  • 一度変色した葉は基本的に元には戻りません。早期に環境を改善したうえで、どうしても気になる場合には清潔な刃物で切り取ってください。
  • 葉が単に黄色いだけでなく、幹がぐらつく、水がしみたような透明感を伴っているといった場合には根腐れの合図です。早急に対処してあげてください。

葉が突然はらはらと落ちてきた

フィカスを育てていると、「葉が突然はらはらと落ちる」という現象に出会うことがあります。これは、環境の変化により「葉からの蒸散が根からの吸水量を急激に上回る」ことが原因で、

  • 植え替え直後で水を十分に吸えていない
  • 急な移動による光・温度・湿度の変化
  • 急激な室温低下(冷暖房の風・窓際の冷え込みなど)

といった要因が考えられます。過去に根を傷めていた場合には、少しの変化でも葉を落とす可能性があるので要注意です。極端な環境変化を起こさないのが対処法ですが、応急処置として効果的なのは

’透明のビニール袋をかぶせて湿度を高め、葉からの蒸散を抑える’

という方法です。この時に直射日光に当ててしまうと蒸れてしまうので、レースカーテン越しなどの直射日光は当たらないが明るい場所で管理するのがポイントです。

葉が落ちても、枝や幹がしっかりしていれば、株自体は生きています。慌てて植え替えや剪定をするのではなく、環境変化を少なく維持して回復を待ちましょう。

枯れてしまった

フィカスが枯れてしまう原因はいくつか考えられますが、可能性が高いのは水やり加減の失敗です。

毎回の水やり後に、いつまでも乾かずに株元が濡れたままになっていると根腐れによって枯れてしまいます。逆に、蒸れによる根腐れを怖がりすぎて、極端に乾燥させてしまうことも、根の機能を失わせてしまい枯れにつながります。また、濃すぎる肥料も根腐れの要因です。肥料は「薄めから初めて様子を見ながら徐々に濃くする」ということをしっかり守ってください。

枯れてしまった株は元には戻りません。枯らしてしまうことがないように、

  • 用土や葉の状態をよく確認し、少し水を欲しがっているタイミングでしっかりと水をあげる
  • 水やり後は、株元が蒸れないように通気を確保する
  • 極端に濃い肥料を与えない

を徹底しましょう。

  • 冬場に低温障害が出たり、夏場の高温に耐えきれなかったりが原因で枯れることもあります。夏場は35℃以下の、冬場は10℃以上の室温をキープしてあげてください。
  • 完全に枯れてしまうとどうしようもありませんが、枝が生き残っている状態であれば挿し木で復活させることが可能です。日ごろから葉や株元の様子を確認し、手遅れになる前に救い出してあげるようにしましょう。

フィカスの増やし方

フィカスの増やし方には、①実生(種を取って育てる) ②枝挿し(挿し木) ③取り木 の3つの方法があります。とはいえ、日本(特に室内)でフィカスを受粉させて種を取ることは現実的にはほぼ不可能です。

ここでは、一般家庭でも実践可能な枝挿しと取り木について見ていきます。

フィカスの樹液は、皮膚につくと痒みや発疹を起こし、床などに垂れてしまうとなかなかとることができません。手袋や新聞紙などを用意し、手や床に樹液がつかないように準備をしてから枝挿しや取り木の作業をするようにしてください。

フィカスを枝挿しで増やす方法

枝挿し(挿し木)は、剪定などにより出た「枝」を使ってフィカスを増やしていく方法です。切り取った枝を「挿し穂」といい、挿し穂を土または水に挿すことで発根するのを待ちます。「気に入った植物を手軽に増やせる」「枝変わりした面白い枝から株を増やせる」といったメリットがあります。作業自体はそれほど難しくないので、安心して取り組めるはずです。ただし、すべての枝が発根し成長していくとは限らないということは知っておいてください。

一部の種(インドゴムの木など)では、葉の付け根にある脇芽と茎を1節分切り取り葉が少し隠れるように土に挿す(葉芽挿し:葉挿しと枝挿しの中間的な方法で、葉挿しの1種)ことでも同じように増やすことが可能です。枝挿しよりも成長に時間がかかりますが、1つの枝から多くの苗をとれるのがメリットです。

<枝挿しの手順>
  • Step 1
    もとになる枝の準備

    枝挿しのためには「挿し穂」が必要です。元気でよく成長している枝(徒長していないもの)を10㎝程度の長さで切り取ります。挿し穂の長さは、枝(茎)の太さや葉の大きさによって調整が必要です。葉が小さく茎が細い場合には8㎝程度、葉が大きく太めの枝の場合には15㎝程度を目安にしましょう。

    切り取った枝は、枝先に1~3枚程度の葉を残して、下の葉は取り除いてください。葉が大きい場合はさらにそれぞれの葉を2/3~1/2程度にカットします。

    • 枝の切り口は水平(傷口が最小になる)で問題ありませんが、土に挿す場合には返し切り(斜めにカット)すると発根しやすくなる場合があります。
    • 剪定の時に切った枝を活用するとわざわざ切り取る必要がないので、剪定の時に一緒に枝挿ししてしまうのがおすすめです。
  • Step 2
    切り口の処理

    カットできた挿し穂をそのまま土や水に入れてもなかなかうまくいきません。この原因は、フィカスの樹液に含まれるラテックス(樹液が白く見える源)が原因です。そのため、カットした挿し穂は、「すぐに水に浸けて乳白色の樹液が出なくなるまですすぐ」ようにしてください。樹液の洗浄が終わったら、新しい水に交換したうえで、2~3時間吸水させてあげましょう。発根促進剤が手元にある場合は、この時に吸わせておくとより効果的です。

  • Step 3
    挿し穂を挿す

    挿し穂が準備できたら、水または用土に挿していきます。

    <水挿しの場合>

    瓶やカップなどに挿し穂を立て、水を1~2㎝程度入れてください。切り口が水につかっていれば問題ありません。水の量が多すぎると、発根せずに腐る可能性が高くなるので「水の入れ過ぎ」には注意しましょう。この時、発根を促す活力剤(メネデールなど)を使用するとより効果的です。

    風通しの良い明るい場所(直射日光はNG)で管理していきます。

    <用土に挿す場合>

    小さめの鉢やプランターに用土を入れ、用土にピンセットや割りばしなどで穴をあけながら、挿し穂の先をつぶさないように注意しながらやさしく挿していきます。穴の深さは挿し穂の長さの1/3程度が目安です。挿し込んだ後は、挿し穂がふらつかないようにきちんと固定してください。挿し穂がぐらついていると発根しません。使用する用土は、市販の「挿し芽種まき用の土」が確実ですが、赤玉土(小粒)などの「肥料分の入っていないもの」であれば問題ありません。植え付け後は鉢底からたっぷりと水が滴るように水やりをし、「風通しの良い直射日光が当たらない明るい場所」で管理します。

  • Step 4
    発根管理
    <水挿しの場合>

    季節にもよりますが「減った分だけ水を足す」を基本に、「週に1~2回新しい水に交換する」ようにしてください。あまり水を頻繁に交換しすぎると発根が遅くなります。水が腐敗しない最低限の水交換を意識してください。発根までの目安は2~4週間です。

    <用土に挿している場合>

    植え付け後は、用土が乾燥しないように気を付けながら発根を待ちます。受け皿に水をためておく(腰水)管理方法でも構いません。発根までは2~3週間が目安です。

    新葉が展開し始めたら発根もし始めています。新葉の展開が確認できたら、「用土の表面が乾いたらたっぷり水やり」にしていきましょう。

    腰水で管理していた人も、腰水管理を継続するのはおすすめしません。腰水管理は、あくまでも発根するまでのものと思ってください。

  • Step 5
    鉢上げ(植え付け)
    <水挿しの場合>

    発根が確認出来て、根の長さがある程度(3㎝程度)になったら、根を傷めないように注意して鉢に植え付けていきます。用土は、自分がこの後育てていく予定のもので構いませんが、「肥料が入っていないもの」を使うのが安全です。植え付け後は、新芽が展開し、本葉が出てくるまでは「風通しの良い直射日光が当たらない明るい場所」で「用土が乾燥しない」ように管理してください。本葉が展開してきたら、通常の水やりに戻していきましょう。

    <用土に挿している場合>

    本葉が2~3枚展開してきたら鉢上げのタイミングです。本格的に栽培する予定の鉢と用土に植え付けてください。植え付け後は、通常の管理で問題ありませんが、強すぎる光にいきなり当てないようには注意してください。

フィカスを取り木で増やす方法

取り木は、親株とつながったまま発根させ、新しい株として切り離す方法です。あらかじめ発根させてから切り離すため失敗が少なく、ある程度大きな苗を確実に得られるのがメリットです。特に、大きく育った株や、斑入り品種などの成長が遅く挿し木が失敗しやすい株の増殖に向いています。

枝挿しよりもやや作業難易度が高いのがデメリットですが、「確実に増やしたい」場合はこちらが第一選択肢になります。取り木は、発根のさせ方によりいくつかのパターンがありますが、ここでは、最も一般的でフィカスに有効な「剥皮法」による取り木の手順を紹介します。

取り木では、水苔を使用するのが一般的方法ですが、赤玉土やバーミキュライトなどの用土を使用することも可能です。ただし、水苔は管理しやすく、発根も比較的早いため、取り木に慣れていない場合には水苔の使用をおすすめします。

〈取り木の手順〉
  • Step 0
    取り木する位置を決める

    増やしたいフィカスの枝(幹)を観察し、元気でやや若め(先端から数十cm以内の、まだ木質化が完全ではないが十分に太く元気な枝(幹))の部分を選びます。葉の色が濃く、節間がしっかり詰まっている部位が理想です。古すぎる枝は発根が極端に遅くなり、若すぎる枝は水分を失いやすいので避けてください。

  • Step 1
    皮を剥ぐ(環状剥皮)

    目的の位置にカッターやナイフで環状(茎(幹)を1周する)に2本切れ込みを入れ、その間の樹皮を丁寧に剥がします。

    2本の切れ込みは、枝(幹)の太さが1㎝以下なら1.5㎝程度の幅で、枝(幹)の太さが1㎝以上の場合には枝(幹)の太さの1.5倍程度(最大で3㎝程度)の幅が目安です。この幅が狭いと、発根せずに表皮の再生にエネルギーが向いてしまいます。

    皮をはぎ取るときは、形成層(柔らかく緑っぽい部分)までしっかり除去するように注意しましょう。形成層が残っていると、これもやはり発根ではなく再生に向かってしまいます。

    剥皮後は切り口には発根促進剤(ルートンなど)を塗布すると成功率が上がります。

    樹液が手や床などにつかないように注意して作業してください。

  • Step 2
    発根資材をあてがう

    皮を剥ぎ終えたら、乳白色の樹液が出なくなるまで傷口を洗い流しましょう。洗浄が出来たら、乾燥しないように手早く

    • 湿らせた水苔でしっかり包み、ラップや透明フィルムで覆って固定
    • ペットボトルを縦に切って筒状に巻き付け、その中を十分に湿らせた用土(赤玉土やバーミキュライト)で満たす

    のいずれかを行ってください。どちらの場合も、外側は透明フィルムやラップで覆い、上下を紐やテープで密閉して乾燥を防ぎます。

  • Step 3
    発根管理

    剥皮した場所を発根用の資材で覆い隠せたら、直射日光を避け、レースカーテン越しの柔らかな光の下で管理してください。発根までの目安は、季節にもよりますが1〜2ヶ月程度です。内部が常に湿っている状態を維持できるように定期的な加水が必要です。透明フィルムやペットボトルを使っていないと、外から水苔(用土)や根の状態を確認できないので、必ず固定道具は透明なものを使用しましょう。あまりにも葛根が遅い場合は、さらに外側からアルミホイルなどの「光を通さず、簡単に取り外せるもの」で覆っておくと発根しやすくなります。

  • Step 4
    切り離して植え付ける

    根がしっかり伸びているのを確認できたら、発根部分の下で枝(幹)を切ります。用土に植え付けている場合は白~黄褐色の根がぱっと見てわかりやすいはずです。水苔を使用している場合には、水苔の色と根の色が同化してやや見にくいと思いますが、慎重に確認するようにしてください。

    切り取れたら、切り口から出てくる樹液が乳白色でなくなるまでしっかり洗浄し、用土に植え付けます。発根させたのと同系統の用土に植えこむ場合にはそのままで構いませんが、異なる用土に植え付ける場合には「根を傷めないように慎重かつ丁寧に」発根資材を取り除いてください。水苔で発根させていた場合には非常に根を傷つけやすいので特に注意しましょう。発根資材を取り除けたら、根を乾燥させないように気を付けながら傷口をふさぎます。母木(もともとの木)側の傷口も忘れずにふさいでくださいね。

    市販されている癒合剤や軽く乾燥させることでも傷口はふさげますが、アロンアルファでふさいでしまうのが個人的にはおすすめです。様々な方のブログやYouTubeでもこのアロンアルファを使う方法は紹介されています。ただし、「本来の使い方」ではないので、何かあってもあくまでも自己責任ですのでご注意を。

    傷口をふさげたら、本格的に栽培する予定の用土に植え付けます。植えつけ方は植え替えの時と同様です。植え付け後1週間は直射日光を避け、レースカーテン越しの柔らかな光の下で管理し、その後徐々に通常の管理へ戻すようにしましょう。母木の方は、大きく切り戻し剪定をした後と同じように管理してください。

存在感と育てやすさを両立!フィカスで空間を彩ろう

様々な種類が存在するフィカスは、

  • 様々な大きさ・形・色彩の葉
  • 多様で個性豊かな樹形
  • 枝ぶりの調整や曲げなど自分好みの姿に仕立てやすい

といった特徴により、様々なタイプの空間に彩を与え、雰囲気をコントロールできるインテリアプランツとして非常に魅力的な植物です。

他の観葉植物と比べ、急な環境変化に少し敏感なところもありますが、基本は丈夫で初心者にも育てやすい観葉植物です。自分の演出したい空間に合わせたお気に入りを見つけたり、コレクションしたりする楽しさもあります。

ぜひお気に入りの一株を選んで、四季ごとに変化していく姿を楽しんでみてください。リビングのシンボルツリーとして、窓辺を飾る一鉢として、きっとあなた好みの雰囲気を作り出してくれるはずです。

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